🧐 なぜカエルやトカゲはがんになりにくいのか？長年の疑問に答えが

「カエルやトカゲががんになった」という話は、確かにあまり聞きません。

これは単に私たちが彼らを観察する機会が少ないからでしょうか？

実は、生物学の専門家の間でも、野生の両生類（カエルやイモリなど）で自然発生的な腫瘍の報告が非常に少ないことは、長年の疑問でした。

この謎を解く鍵が、意外なところから見つかりました。

それは、彼らが持つ「腸内細菌」です。

近年、ヒトを含む動物の研究で、腸内細菌が体の免疫の働きや、がんの進行に大きな影響を与えることがわかってきました。

この知識を基に、「カエルたちが持つ特殊な腸内細菌が、がんを抑える働きをしているのではないか？」という仮説が立てられたのです。

もし自然界の微生物に、がんを撃退する力があるなら、これは新しい治療法開発の大きな手がかりになります！

🔬 カエル由来の細菌をマウスに投与したら、驚きの結果が！

この仮説を検証するため、北陸先端科学技術大学院大学（JAIST）の研究チームは、驚くべき実験を行いました。

細菌の採取:

ニホンアマガエル、アカハライモリ、カナヘビなどの腸から細菌を採取。

マウスへの投与:

がん細胞を移植して腫瘍をつくったマウスに対し、選別した細菌を静脈からたった一度だけ投与。

効果の観察:

腫瘍がどう変化するかを観察。

その結果、ニホンアマガエル由来の細菌「Ewingella americana（エウィンゲラ・アメリカナ）」が、特に目覚ましい効果を示しました。

✨ 確認された驚くべき現象

腫瘍が消滅:

投与されたマウスの多くで、腫瘍の大部分が縮小し、最終的に見えないレベルまで消滅しました。

再発防止:

治癒したマウスに再び同じがん細胞を移植しても、腫瘍が成長しなかったのです。

これは、体内にがんへの「免疫記憶」ができた可能性を示しています。

この細菌は、がん治療をサポートする「補助的な存在」ではなく、「治療そのものを担う存在」として大きな可能性を示したと言えます。

🤔 なぜカエルの細菌は腫瘍だけを攻撃できたのか？

この細菌の働きには、さらに興味深い点がありました。

1. 腫瘍へのターゲティング能力

このエウィンゲラ・アメリカナは、正常な臓器ではほとんど増えず、腫瘍の内部に集中して増殖する傾向が見られたのです。

腫瘍の内部は、酸素が少なく（低酸素）、免疫の働きが弱まりやすい特殊な環境です。

この細菌は、まさにこの環境を好む性質（通性嫌気性）を持っていたため、まるで腫瘍を標的とするように集まることができたと考えられています。

2. 免疫と直接的な傷害のタッグ

細菌が腫瘍内で増えると、以下の2つの作用が同時に働きました。

免疫の活性化:

細菌の存在が刺激となり、がん細胞を攻撃するT細胞や好中球などの免疫細胞が腫瘍に集結しました。

直接的な傷害:

細菌が腫瘍内で増えること自体が、がん細胞に「細胞死」を引き起こしました。

この「免疫の攻撃」と「細菌による直接的な傷害」の相乗効果によって、強い抗腫瘍効果が生まれたと考えられています。

💡 今後の展望と課題

今回の研究は、私たち人間とは異なる環境で生きる自然界の微生物の多様性が、新しい医療の扉を開く可能性を示しました。

カエルの腸内細菌が、私たちのがん治療の未来を変える候補になるかもしれないのです。

しかし、この成果はあくまでマウスの実験で得られた初期段階のものです。

🚧 今後の大きな課題

安全性評価:

カエル由来の細菌を人間に応用するためには、安全性と適切な投与量を慎重に評価する必要があります。

メカニズムの解明:

細菌が体内でどうやって腫瘍にたどり着くのか、また細菌のどの成分が抗腫瘍作用を持つのか、詳細な仕組みを解明することが求められます。

この研究は、これまでの化学療法や放射線治療とは全く異なる、「自然の力」を医療に取り込む新しいアプローチとして、今後の発展が大きく期待されています。

　

　　

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