
脳の血流が落ちると、記憶力が衰える
加齢に伴い、脳の血管は弾力を失い、血流の効率が低下します。
脳は体重の2%ほどしかないにもかかわらず、体の酸素の20%を使うほど“燃費の悪い臓器”です。
酸素と栄養が届きにくくなると、記憶や思考の処理に関わる神経細胞の働きが鈍り、認知機能の低下につながります。
研究者たちは長年、血管の健康を保つ食品を探してきました。
とくに注目されているのが、一酸化窒素(NO)という血管を広げる物質を増やすアミノ酸やポリフェノールを含む食べ物です。
今回の研究で対象となったスナックは、まさにそれらの成分を豊富に含んでいました。
さらに今回選ばれたスナックには「皮」がついていることも重要でした。
皮には抗酸化作用を持つポリフェノールが多く、血管の健康をより強力に支える可能性があります。
では、この食品を実際に食べ続けると、脳にはどのような変化が起きるのでしょうか。
16週間で脳血流が増え、記憶力も5.8%向上
チームは60〜75歳の健康な高齢者31名を対象に、無塩の皮つきピーナッツを毎日60グラム、16週間摂取する介入試験を実施しました。

試験期間はランダム化・単盲検・クロスオーバー方式で行われ、参加者は自らが対照期間と介入期間の両方を経験します。
結果は驚くべきものでした。
● 脳全体の血流が 3.6%増加
最も重要な評価項目である脳血流は、皮つきスナックを食べた期間に大きく改善しました。
● 灰白質では 4.5%増加
神経細胞が集中する灰白質への血流も増加。
● 前頭葉は 6.6%増加、側頭葉は 4.9%増加
これらは「記憶」「言語」「注意力」に深く関わる領域です。
さらに、脳機能の変化は血流改善だけにとどまりませんでした。
● 記憶テストで 5.8%スコア向上
20分前に見た単語を思い出す「遅延再生課題」で、参加者はより多くの単語を正しく回答しました。
これは、脳の血流改善がそのまま記憶力の維持に直結したことを示す重要な結果です。
加えて、収縮期血圧が平均5mmHg下がるなど、心血管系の改善も確認されました。
ピーナッツ由来のカロリーは1日約340kcalと多めでしたが、体重はほとんど増加しませんでした。
研究者は「参加者は自然と他の食事量を調整していた可能性がある」と述べています。
今回の研究はピーナッツの“どの成分”が効果の中心なのかまでは特定していません。
しかし、
・L-アルギニン
・ピーナッツの皮のポリフェノール
・不飽和脂肪酸
など複数の要因が組み合わさって作用していると考えられています。
今回の研究は「特別なサプリ」や「最新デバイス」ではなく、日常的に食べられる身近なスナックが脳の健康を支えられることを示しています。
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