
近年、病院が大量に潰れる可能性があると言われている背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。
主な理由としては以下のような点が挙げられます。
1. 医療費抑制政策と診療報酬の課題:
診療報酬の低さ:
日本の医療は国民皆保険制度に支えられていますが、政府の医療費抑制政策により、診療報酬(医療行為に対する対価)が十分に引き上げられない傾向にあります。
これにより、多くの病院が医業収支で赤字を計上しています。
現在の保険制度では医療費の支出増大をまかないきれなくなっています。
特に2025年度は、団塊の世代が後期高齢者となるピークを迎えます。
長時間労働への報酬不足:
医療従事者の長時間労働や夜間勤務に対する報酬が十分でないこと、予防医療や健康指導への報酬が低いことなども、病院経営を圧迫する要因となっています。
実際、全国で看護師を中心としたストライキが起こっています。
2. 人件費・資材費の高騰と人手不足:
人件費の増加:
医師の働き方改革による時間外労働の上限規制や宿日直の適正化、医療従事者の処遇改善の必要性から、人件費は増加傾向にあります。
特に専門性の高い医療スタッフの採用競争が激化し、高額な給与設定が必要となるケースも増えています。
人手不足:
少子高齢化に伴う労働人口の減少により、医療従事者の確保が困難になっています。
地方や過疎地域では特に医師や看護師不足が深刻であり、診療科の閉鎖や診療時間の短縮につながることもあります。
地方の基幹病院でも、外科医や麻酔科医の不足で、手術ができないところも出てきています。
医薬品・資材費の高騰:
円安や国際的な物流コストの上昇により、医薬品や検査キット、消耗品などの医療資材の価格が高騰しており、病院のコスト増に繋がっています。
3. 患者数の減少と病床稼働率の低下:
コロナ禍の影響と受診控え:
新型コロナウイルス感染症の流行により、慢性疾患や軽症の患者が通院を控える傾向が強まりました。
また、ワクチン接種を契機にかかりつけ医を見直す動きも増え、患者数の回復が見られない病院もあります。
病床利用率の低下:
入院患者数の減少により、病床稼働率が低下している病院が多く見られます。
空いている病床が増えると効率的な運用ができず、収益が減少します。
地域や競合による患者獲得競争:
特定の地域に病院が集中することによる患者獲得競争の激化も、経営を厳しくしています。
4. 経営ノウハウの不足:
多くの病院では医師が経営を担っていますが、医療の専門知識は豊富でも、資金計画や収支管理、事業戦略といった経営スキルが不足しているケースも少なくありません。
これにより、適切な経営戦略を立てられず、資金繰りが悪化する可能性があります。
病院が破綻するのはこのことが原因になっている場合が多いと思われます。
破産した病院を引き継ぐことに特化した医療法人もありますが、引き継いだ後は概ね利益を出しています。
5. コロナ補助金の終了:
コロナ禍においては、感染症対策や診療体制維持のために各種補助金が支給されていましたが、2023年以降、これらの補助金が順次終了し、これまで補助金で補填されていた赤字が表面化しています。
これらの要因が複合的に作用し、多くの病院、特に中小規模の病院や診療所において、経営状況が厳しくなり、倒産や閉院のリスクが高まっていると言われています。
重症者病床のへの補助金:
緊急事態宣言が発令された都道府県で新たに重症者病床を増やした場合、1床あたり最大1950万円の補助金が支給されました。
これは、元々1500万円の補助金に加え、450万円が上乗せされたものです。
その他の都道府県では、1800万円が上限とされていました。
重症者以外の病床への補助金:
緊急事態宣言が発令された都道府県で新たに重症者以外の病床を増やした場合、1床あたり最大450万円の補助金が支給されました(時期によっては、これに加えて別の加算措置がありました)。
その他の都道府県では、750万円が上限とされていました。
これらの補助金に各病院が飛びついたわけです。
実際コロナ用に増床しても、患者を引き受けない病院などもありました。
こんな美味しい補助金が天から降ってきていたのが止まっただけのことです。
問題点
保険料の値上げ
皆保険制度の保険料を上げるというのは、増税、物価高で苦しむ国民の負担をさらに増すことになり難しいです。
医療費支出を減らす
医療費の支出を減らすというのは必要かも知れません。
本当に必要なときにだけ通院するという風にするために、初診料を引き揚げるなどの方法もあるでしょう。
病床数を減らす
日本は世界的に見ても病床数がかなり多くなっています。
空床があると埋めたくなるのが人情です。
病床削減については国が現在進めており、削減した病床1床につき、410.4万円が支払われています。
病院の統廃合を行う
日本は私立病院の割合が非常に高いです。
特に小さなクリニックがたくさんあります。
これらの小規模な医療機関を統合して合理化していくという方法も難しいですがあるでしょう。
尊厳死の法制化
延命治療を行わないというのと、尊厳死を認めると言う事の間には大きな差がありますが、以下の政党等が前向きに考えようとしています。
国民民主党、日本維新の会、参政党、終末期における本人医師尊重を考える議員連盟
私立病院は私企業と同じなので利益を追求するのは致し方ないことであると思います。
必要のない入院を勧めたり、必要のない薬を処方するといったことには一定の監視が必要であると思います。
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2023年度以降の医療費の支出合計予想額は、
2023年度 47兆3000億円
国民一人当たり年間38万円
2024年度予想 約63兆円
2040年度予想 約93兆円~約95兆円
これはヤバイですね・・・

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