
2025年6月27日、ローレン・グロフ氏やレヴ・グロスマン氏を含む70人の著名な作家が、ペンギン・ランダムハウスやハーパーコリンズといった大手出版社に対し、AIの使用を制限するよう求める公開書簡を発表しました。
この書簡は「Against AI: An Open Letter From Writers to Publishers」と題され、NPRの報道によると、公開から24時間以内に1100人以上の作家が署名したそうです。
書簡の主な内容
作家たちは、AIが人間の経験に基づいた作品を「書く」未来に警鐘を鳴らしています。彼らの主張の要点は以下の通りです。
AIによる盗用:
・AIが生成する文章は、作家たちが長年かけて築き上げてきた芸術作品(小説、伝記、詩など)から同意なく、報酬も謝辞もなく盗用された言語に基づいていると指摘しています。
作家の個人的な経験や想像力が詰まった物語が、機械の訓練に利用されている現状を問題視しています。
人間の創造性の危機:
・作家たちは、もし「近視眼的な資本主義の強欲」が勝利すれば、人間ではないAIが本を生み出し、作家が創作プロセスから完全に排除される未来が来ると懸念しています。
これにより、作品が作家にもたらす収益がAIを運用する側に流れること、そしてAIが生み出す文章は安価で質が低いものになると主張しています。
出版業界全体への影響:
・書簡は、作家だけでなく、出版社の編集者、コピーエディター、広報担当者など、人間の手によって書籍制作に関わるすべての仕事が危機に瀕していると述べています。
オーディオブックのナレーターはすでにAIに置き換えられつつあるとし、出版という共同作業の芸術そのものが危機に瀕していると訴えています。
環境への懸念:
・AIの利用が大量のエネルギーと水を消費し、環境に壊滅的な影響を与える可能性についても言及しています。
出版社への要求事項
作家たちは、出版社に対し以下の誓約を求めています。
・作家から盗用したAIツールを使用して書かれた書籍を、公然とまたは秘密裏に出版しないこと。
・AI生成書籍を宣伝するために「著者」をでっち上げたり、人間の著者がペンネームを使用して著作物の盗作に基づいて作成されたAIが生成した書籍を出版したりすることを許可しないこと。
・出版書籍のデザインに、アーティストの作品を盗作して構築されたAIを使用しないこと。
・従業員の全部または一部をAIに置き換えないこと。
・AIが生成した文章やアートの制作を監督する新しい役職を作成したり、既存の従業員の職務記述書をAIの監視役として書き換えたりしないこと。
・ナレーターの音声を許可なくトレーニングに利用して構築されたAIツールによって生成された「ナレーター」ではなく、人間のオーディオブックナレーターのみを採用すること。
作家たちは、出版社に「私たちの作品の未来、そして未来作品を守る担い手になってほしい」と呼びかけています。
これは現在活動している作家だけでなく、将来の作家のためにも必要なことだと強調し、出版社からの返答を待っています。
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なにやら作家さんたちがAIに仕事を奪われるという恐怖をガチに感じているようです。
この公開書簡の話を知る前に、登場者名、大まかなプロット(あらすじ)、登場人物の性別性格、起こった事件、文字数などをAIに入力して極短編の小説を書かせてみたら、サクッと書いてくれました。
自分が想像していたストーリーよりよっぽどできが良かったので、ちょと萎えました。
という訳で、少々心得がある人がAIを利用すれば結構な作品ができそうですね。
でも、此の流れは止まらないと思います。
AIの使用制限要求には無理があるでしょう。
将棋の世界やチェスの世界ではすでにAIが人間を上回ってしまいました。
けれども藤井聡太七冠のように、AIを利用して学習した人が人気を博しています。
AIと藤井七冠とどちらが強いかということにこだわる人は少ないでしょう。
1997年にIBMが誇るチェス専用スーパーコンピューター「ディープ・ブルー」にチャンピオンだったカスパロフが敗北しました。
その時は世界中でニュースになりました。
人間 vs コンピューターというシチュエーションにおいて、人間は負けられないという一般的な認識があったのだと思います。
そのディープ・ブルーでさえ、AIの深層学習革命によって駆逐されました。
将棋の場合AIは1秒で1億手読めるそうです。
上位棋士の場合25手先、藤井七冠は32手先まで読めるのではないかと言われています。
かつての棋聖戦の勝負で、当時七段だった藤井氏が58手目に打った3一銀の好手に付いてAIに読ませたそうです。
すると、4億手まで読んだ段階では5番手にも上がらない手だったそうですが、6億手まで読ませると、突然最善手として挙がってきたとのことでした。
つまり、常に6億手まで読ませるように設定すれば、まずAIが勝つだろうと思われるのです。
量子コンピューターが一般的になってきたらもう無双状態と思われます。
とは言え、人対人の勝負にロマンを感じられるのは、ヒトという生命体が頭脳的、身体的な制約を有するがゆえなのではないかと思います。
ヒトの能力の限界に挑む姿に驚き、感動し、あこがれるのではないでしょう。
そう思うと、人間は謙虚になったなと思います。
ヒトの能力を超える存在を皆が認めるようになったからです。
人工知能(AI)が人間の知能を超える転換点、つまりシンギュラリティはもう来ています。
科学はその性質上、進歩する方向にしか進まないでしょう。
AIが、人間には分からない領域でAIにとって都合はいいけれど、人間にとっては都合の悪いプログラムを書き始めた時に、私達は今まで感じたことのない恐怖を感じることになるでしょう。

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