教育論の最前線である、「教育経済学」で活躍されている中室牧子教授の書かれた、「科学的根拠で子育て」の内容です。
世界的な学術論文の中から信頼性の高いエビデンスを厳選し、最新の科学的根拠に基づく「子育て」に付いて解説されています。
特に以下の二点について解説されています。
1.子供の将来の収入を高めるためにやるべきこと。
2.子どもが勉強を苦にしなくなる方法。
1.子供の将来の収入を高めるためにやるべきこと
1.については、大富豪になるなどではなく、「お金に困らない人生を送ってほしい」程度の願望のもとに説明されています。
では、「子供の将来の収入を高めるためにやるべきこと。」とは何かというと、
① スポーツをすること。
② リーダーになること。
③ 非認知能力を高めること。
の3つだとおっしゃっておられます。
① スポーツをすること
スポーツをすることによって、進学時や就職時の採用で有利になったり、忍耐力やリーダーシップが身につくということが上げられます。
ノルウェーの研究では、スポーツ経験があると履歴書に書いて送ったほうが、面接に呼ばれる確率が高かったという結果が出ています。
また、アメリカの学術調査によると、高校でスポーツの部活をしていた男子学生の方が、していなかった学生よりも、16年後の収入が21.4%高くなっていたという結果が出ています。
② リーダーになること
アメリカのカリフォルニアのサンタバーバラ校のピーター・クーン教授らの研究によると、高校時代にリーダーシップを発揮した経験がある人は、その様な経験がない人と比べると、高校を卒業して11年後の収入が4~33%高くなることが分かりました。
その他にも、高校時代に積極的にリーダーになることで、将来の収入をあげることを示した研究結果が多くあります。
また、リーダーになることで、学力や学歴が高まる傾向があり、将来の収入を上げることにつながっているのです。
③ 非認知能力を高めること
非認知能力とは、IQのような数値化できる知的能力以外の能力の全般を指している言葉です。
たとえば、
・忍耐力
・責任感
・社会性
といったものが挙げられます。
また、多くの企業が人を採用する際に、この非認知能力を重視しています。
日本経済団体連合会が実施している新卒採用に関するアンケートでは、選考にあたって特に重視した点として、
1位 コミュニケーション能力
2位 主体性
3位 チャレンジ西神
4位 協調性
5位 誠実性
(↑以上は非認知能力)
となっており、学歴や学力(認知能力)があまり重視されていないということが分かっています。
この傾向は国内の企業にとどまらず、海外の企業でも同様であり、やはり非認知能力が重要視されています。
非認知能力には様々なものがありますが、中室教授は、収入を上げるための非認知能力として、
・忍耐力
・自制心
・やり抜く力
の三つを挙げています。
では、これらの非認知能力を上げるために、子供の頃に何をすればいいのでしょうか?
それは、スポーツをすることです。
スポーツをすることで、忍耐力ややり抜く力、協調性を養うことができます。
また、スポーツでリーダーを経験することにより、リーダーシップや責任感を身につけることもできます。
音楽や美術によっても非認知能力を上げることができることが分かっています。
将来優良な会社に入って、高収入を得られるようになるために、子どもにたくさん勉強をさせようとする親御さんもいらっしゃるでしょう。
しかし、子供の頃には勉強だけでなく、スポーツをしたり、リーダーを努めたりなど、様々な経験をすることが大切なのです。
2.子どもが勉強を苦にしなくなる方法
勉強を通して、様々な知識や技術を身につけることは、子どもの将来にとってとても大きなメリットがあります。
子どもが自発的にどんどん勉強していく場合は何の心配もないわけです。
ところが、勉強をしない、できない場合にどうするかが問題となります。
勉強ができない子からできる子に変えるための秘策とは、
1.目標を立てる
2.習慣化する
3.チームで取り組む
の三つです。
これらの秘策は、今、勉強ができない子からできる子に変えるときにだけ必要なものではありません。
今後学校を卒業した後も、リスキリングや学び直しによって常に知識や技術をアップデートすることが求められます。
その時に勉強することが苦にならないようにするための秘策でもあるのです。
1.目標を立てる
子どもに限らず、人には、将来得をすることよりも今楽をすることを選んでしまうという現在バイアスがかかっています。
この現在バイアスによって、勉強を先延ばしにしてしまうことを防ぐために「目標を立てる」ことが効果的なのです。
カナダの名門大学であるマディル大学の研究では、目標を立てることで大学生の成績が大幅に改善されたという結果が出ています。
目標には、
・試験で80点取るぞ!という結果的な目標と
・1日3時間勉強するぞ!という過程的な目標とがあります。
アメリカの大学生4000人を対象にした研究では、◯時間勉強するといった「過程的な目標」を立てた学生は成績が上がり、◯点取るといった「結果的な目標」を立てた学生は成績が上がりませんでした。
学生は、自分でコントロールしやすい目標のほうが効果が上がるため、このような結果が出たと考えられています。
・目標を立てる時には、自分でコントロールしやすい目標を立てるようにすること。
・他人ではなく自分で目標を立てること。
の二点を大事にして目標を立てると効果が上がりやすいとされています。
2.習慣化する
① 初期の抵抗感を和らげて、取り掛かるきっかけをつくること。
② 繰り返すこと。
これら二つを同時に行うことが大切です。
「①初期の抵抗感を和らげて、取り掛かるきっかけをつくる」ためには、
・子どもにお小遣いやご褒美をあげる。
子どもにお小遣いやご褒美などのインセンティブを与えることが、最初の一歩を踏み出すのに効果的であるということは多くの研究で証明されています。
最初の一歩の踏み出しにインセンティブを与えるだけではなく、その後も「週に4日間勉強したら」などのように、勉強を繰り返し行うように持っていくことが大切です。
お小遣いやご褒美をあげるというのは、今まで勉強の習慣がなかった子どもに有効な手段です。
今まで勉強の習慣があった子どもにその様なインセンティブを与えると、逆効果になる恐れがあります。
今まで、自分の興味や関心と行った内的なインセンティブによって勉強していたのが、お小遣いやご褒美などの外的なインセンティブを与えることによって、内的なインセンティブを失ってしまうことになるからです。
3.チームで取り組む
チームで取り組むことにより、ピア効果が生じます。
ピア効果とは、お互いの生産性や行動に影響を与え合うことを言います。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究によると、
・友達とチームを組むことで勉強量が増える。
という事が分かっています。
個人で勉強するよりも、チームで勉強したほうが自習室に行く回数が増えました。
これは、チームを組むことで、社会的プレッシャーがかかり、自習室に行くという行動につながったと考えられています。
まとめ
1.子供の将来の収入を高めるためにやるべきこと。
① スポーツをすること
② リーダーになること
③ 非認知能力を高めること
特に大事な非認知能力は
・忍耐力
・自制心
・やり抜く力
これらはスポーツをすると身につく。
2.子どもが勉強を苦にしなくなる方法。
1.目標を立てる
2.習慣化する
3.チームで取り組む
本の内容は以上になります。
チームを組む相手が見つかりにくければ、兄弟・姉妹・親子でチームを組んでみてはいかがでしょうか?
目標を立てるためには、手帳を利用するのがいいのではないかと思います。
・なりたい自分像・夢
・数年計画
・今年の計画
・今月の計画
・今週の計画
・今日の計画
などの計画を立てるのも楽しいものです。
また、小さな約束や予定ができたら、常に手帳に書き込むような習慣ができればいいですね。
コメント