睡眠こそ最高の解決策である
マッシュ・ウォーカー著
柳沢正史監修
睡眠は心身の健康を保つ最強の薬です。
全ては睡眠で最適化されるのです。
それなのに人類は、悲しいことに、自分の意志で睡眠時間を削っている唯一の種族です。
睡眠不足の悪影響がどんなものかを知れば、あなたはきっと驚くに違いありません。
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あなたはこの1週間、自分は十分に眠ったと自信を持って言えるますか?
目覚まし時計の助けを借りずに、スッキリと起きることができた日を思い出せるでしょうか?
たいていは、上記の質問のいずれかがNOになるでしょう。
現代人の多くが睡眠不足と言っても驚かないでしょう。
しかし、その結果がどうなるかを知れば、きっと驚くに違いありません。
睡眠時間が6~7時間を下回る状態が続くと、
免疫機能が衰え、がんのリスクが2倍にもなるんです。
それに加えて、睡眠時間はアルツハイマー病を発症するかどうかのカギも握っています。
また、心血管病や脳卒中、うっ血性心不全などをを発症するリスクが高まります。
睡眠不足は、うつ病、不安、自殺傾向などの様々な心の問題の原因にもなっています。
さらに恐ろしいことに、寝不足だと太ってしまいます。
寝不足の時は食欲が増すと感じたことはありませんか?
実はこれは単なる気のせいではありません。
睡眠が足りないと、空腹を感じるホルモンが大量に分泌されてしまい、逆に、満腹を感じるホルモンは少なくなってしまいます。
その結果、十分に食べても食欲が消えないで、際限なく食べたくなってしまいます。
このように、ホルモンの作用で私たちは太ってしまうわけです。
以上のことを総合すれば、睡眠不足が寿命を短くするということが容易に理解できるでしょう。
現代社会には睡眠不足が蔓延しております。
この深刻な問題の解決に向けて、睡眠科学の第一人者である、マシュー・ウォーカー教授が世界最先端のの睡眠に関する知識を一冊にまとめてくれたものが本書になります。
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目次
1.健康のためには睡眠が最も大切
2.あなたを眠らせない犯人は誰か
3.ぐっすり眠るためのアドバイス
1.健康のためには睡眠が最も大切
最新の研究によると、食事、運動、睡眠のうち、健康のために最も大切なのは睡眠であることが分かってきました。
眠れなかった一日と、不健康な食事をした一日と、運動不足の一日を比べてみて下さい。
最も悪影響が大きいのはきちんと眠れなかった一日でしょう。
心身の健康をここまで力強く回復してくれるのは眠りだけです。
自然な機能であっても、医学的な処置であっても、眠りほどの力を持つものはこの世に存在しません。
最新の睡眠研究によって、睡眠は心身の健康を保つ最強の薬だということが明らかになっています。
しかし、残念なことに、睡眠不足がもたらす深刻な害についてはきちんと知られていないというのが現状なのです。
現在、健康に関する議論で、最も欠けているのはこの部分であろうとマシュー教授は主張しています。
自分の睡眠は足りているのかを判別する質問
質問1.
朝起きてから、午前10時か11時頃に眠くなりますか?
「はい」ならば、睡眠の量が足りないか、または、睡眠の質が悪いか、もしくはその両方となります。
質問2.
カフェインを摂取しなくても、午前中から頭がきちんと働きますか?
「いいえ」ならば、慢性的に睡眠不足の状態にあり、カフェインで無理やり目を覚まさせている状態の可能性があります。
睡眠時間は、最低でも8時間か9時間は必要です。
睡眠不足の悪影響はたくさんあります。
・脳内にアデノシンが溜まっていきます。
アデノシンは疲労物質で、眠気を誘発します。
アデノシンは、人をやる気にさせるドーパミンの分泌を止めてしまいます。
睡眠により、アデノシンはきれいに取り除かれます。
しかし、睡眠不足になると、取り除かれなかったアデノシンが脳内に残留します。
そして、その日に生成されたアデノシンも溜まっていきます。
睡眠不足が続くと、取り除かれなかったアデノシンの残高(睡眠負債)がどんどん増えていくことになります。
アデノシン残高(睡眠負債)はずっと脳内に残り、慢性的睡眠不足状態を作り上げます。
そうすると、その人は、
慢性的な疲労を訴え、心身ともに様々な症状に悩まされることになります。
睡眠不足かどうかを判定する質問は他にもあります。
質問3.
目覚ましがなくても決めた時間に起きられますか?
「いいえ」ならば、決められた時間に起きると睡眠不足状態になります。
つまり、睡眠時間が足りていないということなので、もっと早くから寝るようにしなければなりません。
質問4.
パソコンで文章を読む時に、何度も読み返さないと意味が頭に入らない
ということがありますか?
「はい」ならば、その原因が睡眠不足である可能性が高いです。
大事なことは、今までに紹介した基準を使って、自分の睡眠が足りているのかどうかを調べることから始めることです。
では、何時間寝ればよいのでしょうか?
大規模調査によると、7時間から9時間がよいという結論が出ています。
このことを踏まえて、マシュー教授は、覚醒時間が16時間、睡眠時間が8時間が最適なバランスであると言っています。
寝すぎると早死にするというのは本当なのでしょうか?
答えは、「嘘」です。
重い疾患を持った人は、免疫力・体力を上げるために必然的に睡眠時間を多く取るようになっていくということになります。
つまり、身体に疾患を抱えている人の睡眠が長くなるということにすぎません。
睡眠学の大家である柳沢先生は、人間は必要以上に寝ることはできないということもおっしゃておられます。
2.あなたを眠らせない犯人は誰か
現代人はつかれている人が多いです。
なぜ、人はそんなに疲れているのでしょうか?
それは私たちの睡眠を奪っている犯人が、現代社会には多すぎるからです。
十分な睡眠を確保するためには、それらの犯人を見つけ出して排除していかねばなりません。
犯人A
電気の光です。
脳内にある視交叉上核(しこうさじょうかく)という24時間時計の役割を果たす部位は、光が感知されなくなると、松果体の働きを高め、松果体はメラトニンと呼ばれる睡眠誘発ホルモンを分泌します。
夜の人工光は、たとえ弱い光であっても、視交叉上核はまだ昼だと判断してしまいます。
人工光を消しても、そこからメラトニンの分泌が始まるので、しばらくは眠れません。
睡眠をとりやすくするためには、夜の照明は間接照明などにするとよいでしょう。
また、ブルーライトカットメガネも有効です。
スマホやタブレットには青い光を出さないモードもありますよね。
そして、寝ている間は、寝室を真っ暗にするというのも大切です。
犯人B
アルコールです。
アルコールによる眠りは自然の眠りとは全く違います。
アルコールは睡眠を断片的にします。
夜中に何度も目が覚めるので、疲れが取れません。
アルコールは現在分かっている限り、最も強力なレム睡眠抑制因子の一つです。
アルコールを摂取すると、大切なレム睡眠が奪われてしまいます。
※レム睡眠:覚醒時に得た情報を整理・記憶する働きがある。
犯人C
目覚まし時計です。
まだ眠いのに無理やり起きる習慣があるのは人間だけです。
目覚まし時計でおきた人は、血圧が急上昇し、脈拍も上がります。
スヌーズ機能を使うということは、短時間の間に何度も心臓にショックを与えるということです。
週5回のペースで長年これを続けていると、心臓や神経系にダメージを与えることになってしまいます。
しかし、「目覚まし時計で決まった時間に起きないと遅刻してしまう!」という人に対して、筆者はアドバイスをしています。
「スヌーズ機能」だけはつかわないようにと。
犯人D
睡眠薬です。
睡眠薬を使っても自然な眠りは得られずに、不自然な眠りになってしまうのです。
睡眠薬は脳の外側だけを眠らせているにすぎません。
自然なノンレム睡眠の脳波と、現代の睡眠薬で眠った脳波を比べてみるとその違いがはっきりと分かります。
薬で眠った脳は、一番大きく、一番深い脳波が欠けています。
一番深い脳波が欠けているということは、睡眠の質がめちゃくちゃ低下しているということになります。
睡眠薬の副作用もあります。
翌朝も疲れが取れない。
日中も頭がぼんやりする。
夜に自分が意識していない行動をとる。
日中に反応速度が鈍り、車の運転などに支障が出る。
昼に頭がスッキリしない
↓
カフェインを取る
↓
夜眠れないので睡眠薬を飲む
↓
昼に頭がもっとボンヤリする
↓
事態はどんどん悪化する
睡眠薬を飲んでも、
実際に増える睡眠はほんのわずかである。
その効果さえも客観的と言うよりは主観的である。
ということが分かっています。
3.ぐっすり眠るためのアドバイス
① いつも同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
(これは大事です)
② 夜寝る前に運動してはいけない
(寝る2~3時間前には運動を終えましょう)
③ カフェインとニコチンを接種しない
(カフェインが抜けるのに8時間かかることもあります)
④ 寝る前にアルコールを接種しない
(レム睡眠が失われ睡眠が浅くなります・呼吸が妨げられます)
⑤ 夜の遅い時間に大量の飲食をしない
(消化不良を起こし睡眠を妨げます)
⑥ 午後3時を過ぎたら昼寝をしない
⑦ 寝る前にリラックスする
⑧ 寝る前にお風呂につかる
⑨ 寝室を暗く、涼しくし、寝室にデジタル危機を持ち込まない
⑩ 日中に太陽の光を浴びる
(朝起きてから太陽光・人工光を浴びましょう)
とりあえず、寝れるだけ寝ようと思います。
睡眠に関心のある方はこちらもどうぞ。