機能的識字能力=文字の読み書きだけでなく、文章を理解し、読み書きを実践的に活用できる能力のことを指します。

非認知能力=積極性や粘り強さ、リーダーシップやモチベーションの高さといった数値では図りにくい能力のこと。

機能的識字能力が高いと、本で学習をしたり、文章から物事を理解するのが容易になります。
例えば、自学自習するだけで学ぶことができたり、契約書や説明書を読み解くことができて、不利な立場になることを回避できます。
非認知能力が高いと、コミュニケーションがスムーズにとれたり、リーダーシップを発揮したり、モチベーションが高いなど、「世渡り力」が高くなります。
従来は、「学力」の高さに評価が集中していましたが、現在では学力(認知能力)以外に、非認知能力の重要性が指摘されています。
また、物事の理解に欠かせない機能的識字能力にも注目が集まっています。
機能的識字能力を高める方法
子どもの場合
子どもが機能的識字能力を身につけるためには、文字や言葉に対する興味を引き出し、日常生活の中で自然に触れる機会を増やすことが重要です。
1.読書習慣を楽しく育む:
・読み聞かせ:
幼い頃からの読み聞かせは、言葉への興味や物語を理解する力を育みます。
年齢が上がっても、親子で同じ本を読んで感想を話し合うのも良いでしょう。
・図書館や書店へ行く:
子どもが自分で本を選ぶ楽しさを体験させましょう。
興味のある分野の本から始めるのがポイントです。
・読書環境を整える:
家の中に本が身近にある環境を作り、読書が特別なことではない雰囲気を作ることが大切です。
マンガや絵本も活用し、最初は活字に慣れることを目的にします。
・音読を習慣にする:
教科書や好きな本を声に出して読むことは、文字と意味を結びつける練習になります。
内容を理解しながら読めているか、時々質問してみるのも良いでしょう。
2.会話を豊かにする:
・積極的な対話:
日常の出来事やニュースについて、親子で積極的に会話しましょう。
「なぜそう思うの?」「もし自分だったらどうする?」など、考えを深める質問を投げかけることで、語彙力だけでなく思考力や表現力も養われます。
・「なぜ?」「どうして?」を大切にする:
子どもが疑問を持ったら、一緒に調べたり考えたりする時間を作りましょう。
自分で情報を探し、理解しようとするプロセスが読解力を高めます。
新聞やニュース記事を一緒に見て、内容について話し合うのも効果的です。
3.文字に触れる機会を増やす:
・身の回りの文字に興味を持たせる:
看板、商品のパッケージ、テレビの字幕など、日常生活の中にある文字に注目させ、意味を教える。
・手書きの機会を作る:
絵日記を書く、手紙を書く、買い物リストを作るなど、目的を持って文字を書く機会を提供します。
4.デジタルツールの活用(補助的に):
読み上げ機能、文字の拡大表示機能、フリガナ機能、ハイライト機能などがあるデジタル教科書や学習アプリを活用し、子どもの特性に合った方法で学習をサポートします。
大人の場合
大人の機能的識字能力の向上は、継続的な学習と実践が鍵となります。
1.意識的な読書習慣:
・新聞や専門誌を読む:
自分の興味のある分野だけでなく、社会情勢や経済に関する新聞記事、専門誌などを定期的に読み、理解を深める努力をします。
・多読と精読:
様々なジャンルの本を幅広く読む「多読」と、内容を深く理解するためにじっくり読む「精読」を組み合わせることで、読解力と語彙力を高めます。
・要約や意見の作成:
読んだ内容を自分なりに要約したり、それに対する意見を考えたりする練習をすることで、情報の整理能力と表現力を鍛えます。
2.実用的な文章作成と理解:
・ビジネス文書の練習:
報告書、企画書、メールなど、業務で頻繁に使う文書の作成練習をします。
テンプレートを活用したり、上司や同僚にフィードバックをもらったりするのも有効です。
・契約書や公的文書の確認:
日常生活で遭遇する契約書、保険の約款、行政からの通知などを、不明点を積極的に確認しながら読み解く習慣をつけます。
・ツール活用:
長文の読解が苦手な場合は、色付き下敷きや定規で区切りながら読む、蛍光ペンでラインを引くなどの工夫や、音声読み上げソフト、文字起こしアプリなどのツールも活用します。
3.情報リテラシーの向上:
・情報の真偽を見抜く力:
インターネット上の情報やニュース記事など、情報源の信頼性を判断し、フェイクニュースに惑わされないようにする訓練をします。
・デジタルデバイスの活用:
パソコンやスマートフォンを使った情報収集、オンラインサービス利用に慣れることで、デジタル識字能力も向上させます。
非認知能力を高める方法
非認知能力は、経験を通じて育まれる側面が強いため、意識的な行動と振り返りが重要です。
子どもの場合
子どもの非認知能力は、安全で肯定的な環境の中で、多様な経験を通じて育まれます。
1.自己決定と挑戦を促す:
・「自分で決める」経験:
子ども自身に選択権を与え、「どうしたい?」「どっちがいい?」と問いかけ、できるだけ多くの場面で子ども自身に物事を決めさせるようにしましょう。
これにより、自律性や責任感が育まれます。
・興味を応援する:
子どもが興味を持ったことや楽しんで取り組んでいることを積極的に応援し、挑戦する機会を奪わないようにします。
・失敗を肯定的に捉える:
失敗しても責めたりがっかりした態度をとったりせず、「もう一度やってみようか」「次はこうしてみよう」と前向きな声かけでサポートし、粘り強さやレジリエンス(回復力)を養います。
2.多様な人との交流と協調:
・異年齢との交流:
同じ年齢の子どもだけでなく、異年齢の子どもや大人と関わる機会を設けることで、協調性、コミュニケーション能力、思いやりを育みます。
・共同作業:
遊びやお手伝いの中で、協力して物事を成し遂げる経験をさせます。
3.感情の認識と表現をサポート:
・感情の言葉を教える:
自分の感情を言葉で表現できるように「嬉しいね」「悲しいんだね」などと感情に名前をつけてあげます。
・共感と傾聴:
子どもの話にきちんと耳を傾け、感情に寄り添うことで、安心感を与え、他者への共感を育みます。
4.自然体験と遊び:
・自由な遊び: 自然の中で自由に遊んだり、夢中になって遊べる環境を整えたりすることで、好奇心、探求心、創造性、問題解決能力が育まれます。
・「考える遊び」: 子ども同士でコミュニケーションをとりながら、「考える遊び」を実践できる場所へ連れて行くことも有効です。
大人の場合
大人の非認知能力は、自己認識を深め、意識的に行動を変え、他者との関わりを通じて向上させることができます。
1.メタ認知と内省力を高める:
・自分を客観視する:
自分の思考、感情、行動パターンを意識的に観察し、なぜそう感じたり行動したりしたのかを振り返ります。
日記を書く、ジャーナリングを行う、瞑想するなどが有効です。
・価値観の明確化:
自分が何を大切にしているのか、どのような人間になりたいのかを定期的に問い直すことで、行動の軸を明確にし、自己肯定感を高めます。
2.フィードバックと自己評価:
・積極的にフィードバックを求める:
上司、同僚、友人など、信頼できる人から自分の行動や能力について客観的な意見を求めます。
・自己評価と他者評価の比較:
自分の強みや課題を自覚し、他者からの評価と照らし合わせることで、より具体的な改善点を見つけることができます。
3.目標設定と計画的な行動:
・具体的な目標設定:
伸ばしたい非認知能力(例:コミュニケーション能力、課題解決能力)を明確にし、具体的な行動目標を設定します。
数値化できる目標(例:「月に2回異業種交流会に参加する」「週に1回、意見の異なる人と議論する」)が望ましいです。
・習慣化と継続:
小さな目標から始めて、成功体験を積み重ね、習慣化することで、粘り強さや自己効力感を高めます。
4.多様な経験と学習:
・新しいことへの挑戦:
趣味や習い事を始めたり、これまでに経験したことのない分野に挑戦したりすることで、困難を乗り越える経験や新しい視点を得ることができます。
・異なる分野の人との交流:
自分の専門分野外の人と積極的に交流し、多様な考え方や価値観に触れることで、柔軟性や共感性を養います。
・リベラルアーツを学ぶ:
多角的な視点から物事を理解し、自由な発想で問題を解決する能力を育むために、哲学、歴史、文学などのリベラルアーツを学ぶことも有効です。
※リベラルアーツ=特定の専門分野に特化するのではなく、複数の領域を横断的に学び、総合的な教養と思考力を養う教育体系です。
5.メンタリングやコーチングの活用:
・専門家からのサポートを受けることで、自己理解を深め、効率的に非認知能力を向上させるための具体的なアドバイスや枠組みを得ることができます。
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機能的識字能力と非認知能力は、互いに密接に関連しており、片方を高めることがもう一方にも良い影響を与えることがあります。
例えば、読書を通じて共感力や探求心を育むことは、非認知能力の向上にも繋がります。
両方の能力をバランス良く高めることが、個人が充実した人生を送り、社会で活躍するための鍵となるでしょう。

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